【読書感想文】教養としてのお金とアート

どうも!
執行部部長のまいけるです。

はじめましての方の為に、少しだけ自己紹介を。

普段はYouTubeで受験美術の解説をしたり、美大浪人記の漫画を描いたりしています。

客観的に肩書きをつけるならば、YouTuberというのが適当かと思いますが
現在進行形で美大にも通っており、自分探しの最中でもあります。

今回は、最近読んで面白かった本について紹介したいと思います。

タイトルは・・・

『教養としてのお金とアート』

お堅そうなタイトルですが、表紙はポップで可愛めのデザイン。
(色味や線のシンプルさが上品でもある)

2020年9月2日に発行された図書で、東京画廊代表の 山本豊津(ほづと読む)さんと
公認会計士の 田中靖浩さんが、対談形式でお金とアートの話をするという内容です。

どんな人に読んで欲しいかというと・・・

  • 美術に興味があってお金にも興味がある方
  • 美術がお金になる仕組みに興味がある方
  • ファインアートを生業としていきたい方
  • 美術関係のビジネスに興味がある方

僕個人としては若手の美術学生、特にファインアート(デザイン系じゃない美術)
を勉強する学生に読んで欲しいと思いました。

日本美術界では避けがちな”お金の話”

さて、本の内容を紹介する前に、

東京画廊の山本豊津さんについて。
1948年生まれで武蔵美の建築学科卒。
元大蔵大臣村山達雄秘書を経て東京画廊代表に。

元はお父上様が画商だったきっかけで、画商の世界に入ったのだとか。

作中「父が種を巻いて育てた物(アーティストや人脈等)を僕が収穫しているようなもの」と仰っています。
画商という仕事にはプライマリーとセカンダリーと種類があるらしく、
セカンダリーは既に完成された作家の作品を買い、そして更に高く売る仕組み。
(オークション等もセカンダリーに属する)


プライマリーはより作家に寄り添い、作家自身を売っていく。といったような枠組みらしく、
銀座にある東京画廊はプライマリー・ギャラリーに当たる、まさに「種を巻いて育てる」と言う言葉に相応しい
作家自身を育て売っていく仕事のようです。

公認会計士の田中靖浩さんについて。
1963年生まれで早稲田大商学部卒で、外資系コンサルティング会社を経て公認会計士に。

お金を扱いお金を貰うお仕事。
美大生の僕から見ればそれこそ絵に描いたようなエリートに見えます。

本書の中では”アート”がメインで、話が進んでいく中、
アートに馴染みがない人やビジネスパーソンでもわかりやすいように話を要約し展開してくれ、
美術界隈と一般社会を繋いでくれる通訳の様な役割を果たしてくれています。

そして逆に、経理経営に疎い我々美大生にも、わかりやすい言葉選びと話し方で、
うまくお金の話に興味をもてるようにわかりやすい言葉でお話してくれています。

日本にアートが浸透しない理由

本書はまずはじめに、
日本にアートが浸透しない理由について考察していきます。

世界の美術マーケットは6兆7500億円と言われているうち、アメリカとイギリス、中国が取引額の8割以上も占めていて、日本のマーケットは世界の3%程の割合しかないそうです。これは浸透していないと言うに充分ですね。

将来的にアートマーケットは30兆円まで膨らむ見込みがあり、
そこに日本がどのよう関わっていけるかを問題視していました。

続いて、
会計の起源が「アラビア数字」の普及にある事や「金利」という概念が資本主義を発達させた事から始まり、
簿記のプラットフォームの美しさについてなど『会計』を軸に話が進んでいきます。

その後アートと会計の両視点から日本の現在について話し合い、
最終的には資本主義の未来について語ります。

かなりざっくりとした要約なので詳しくは本書を見て欲しいと思います。
※セールスでは無いです(苦笑)

現状日本のアート界が抱える問題

本書を読んで気になった点、
現状日本の抱える問題で、特に我々美術関係者に関わりの深い物を抜粋してみたいと思います。

  • 日本の美大では実際に手を動かす「クラフト」的部分ばかりが重要視されている。
  • アーティスト志望の美大生がアートに正当に値段をつける為の授業がない。
  • 日本ではアートに値段をつける事を「いやしい」と思ってしまいがち。
  • 日本では「売り手」と「買い手」をうまくマッチングする為のインフラが整っていない。

こうして箇条書きすると、
今我々美術学生が意識することで、
この先、解決していけそうな問題もあるように思います。

たしかに、日本の美術大学教育では
本書にもあるように“クラフト”つまり「描くこと」が重要視されているように思います。

少し具体的に美大のスケジュールの話をすると、

STEP
課題は大体月に一度の単位で出題。

課題の出題意図などが説明される時間があります。

STEP
制作期間一ヵ月弱

制作中は特に技術的指導やコンセプトのブラッシュアップなど、
手取り足取り教えて貰う訳ではなく「聞けば答えてくれる」といった感じ。

STEP
講評会(ここで生徒も教授も全員集合)

全員の作品を並べて足りない部分や優れている部分などを全員で共有します。

基本このスリーステップの繰り返しであります。
本格的に気になった方は一度ご入学頂ければと。
※こちらでは一切の責任を負いかねますが…

ステップ③の講評会では、
その世界では名のある教授が作品にコメントをしてくれる他、
露骨に順位が発表される学科もあり(特にデザイン系に多い)、
美大生にとって最も大事な刺激を受けるイベントであります。

講評会で「〇〇さんの作品の方がクオリティが高いから頑張らないと」と思っていくうちに、
制作期間の一ヵ月の時間の使い方がうまくなっていきます。
※但し頑張れない人、ドロップアウトしていく人もいます。

作品のクオリティを上げるにはとても良いシステムですが、
しかしこれでは先に問題提起したように、内側の序列だけを気にして外の世界に目が向きません。

絵を買ってくれるお客さんも、アートの本流も、現在の美大界隈の外の世界にあるのです。
最近では『極力良い所を見つけてあげる』という傾向が強く、クオリティの反省すら失われつつあるように思います。

基本的にこのスリーステップの流れで、その他の興味のある分野の勉強は自分で調べる…といった感じなので
特にファインアート系の学部では、作品に値段をつける為の知識や実践の授業があれば、
日本のアートが外の世界に出ていきやすくなるように思います。

日本美術界の現状を変えたい

僕はこの本を読み終えた時に、


「僕が日本美術界の現状を変えたい!」


と思ってしまいました。照笑

冒頭、美術を学ぶ学生に読んで欲しいと書いたのは、
我々若い世代が未来を変えられる可能性を秘めている事に気付いたからです。

アートを生み出す人が日本から海外にバンバン出ていく未来。わくわくしますね。
わくわくしませんか?僕はわくわくします。

広い目で見ればここ最近は絵を描いて生きる事が、充分成立しやすい環境になっているとも思います。
※SNS発のイラストレーターも良く見ますよね。とても良いことだと思います。

僕もデジタルではイラストの仕事を学生の分際でいくつかやらせて頂いた経験があります。
※専門職なので割と金銭的な部分は良いなと感じる事が多いです。

しかし、
俗に言う”アート”。
僕が学校でやっているアートは、
作家の手から生まれたアートは、
もっと“”実体感””があってものすごく愛おしいんですよね。

なのでそんな、
“魂と汗の結晶”の良さがもっと広まれば、
社会が少しだけ豊かになるのではと期待しているのです。

僕の先生はいつも言います。
「描き続ければ40代になる頃には食えるようになるさ」と。

美術は生活必需品ではないし、
便利なサービスや物を生み出している人達に比べると社会への貢献は薄いのかも知れません。

しかし
そんな考えを凌駕する程、世間を納得させる程情熱を持って、
集中の限界を超えてアートを生み出し続ければいつかきっと、

「まぁ社会にいても良いかな」と
認めて貰えるのではないかと僕は思っています。

40代では流石に、親孝行や結婚など考えると遅すぎると思います。笑

そんな常識を変えてゆけるのは、
デジタルネイティブに生まれた僕ら世代なのでは無いかと思うのです!

と、少し照れ臭い考えをネットを通して発信してしまう程、熱量を持った一冊でした。

皆様もぜひご一読頂ければと思います。
ではこれにて。

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